解明されつつある”気”の不思議

東洋医学の基本概念が「陰陽」「虚実」という自然哲学的二元論から成り立っているのは先に述べましたが、この「陰陽」のふたつの対立概念をわかりやすくいうと「事物にはすべて二面性がある」ということです。電気のプラスとマイナス、男性と女性、昼と夜、夏と冬、表と裏などもその概念に当てはまります。また、「乾坤一擲」の「乾坤」は易学でいう「陰陽」をあらわし、私たちの生活は自然の法則と深くかかわっています。 それでは、この陰陽思想がどのように東洋医学に応用されているのでしょうか。

「元気がない」「血気盛ん」「病は気から」といった表現は東洋医学の「気血」思想から生まれた言葉です。この”気”は私たちが日頃使う言葉の中によく登場しますが、”気”そのものの実態については科学的な解明が十分にはなされていません。ただ実感として、多くの人に体験されている”気”のエネルギーを医療にも応用した健康法である「気功」が、幅広い層の人々に受け入れられていることは周知の事実です。

近年になって西洋医学における心身医学では精神・神経・内分泌および免疫学の発展により、「心身一如」をモットーとする東洋医学、その中でも「鉞灸治療に対する関心の高まり」が特に顕著となっています。それはつまり「病は気から」といわれる、東洋医学でいう「自然治癒力」を西洋医学的に解明しようとする試みにほかなりません。たとえば、笑いを治療に生かす「病院内寄席」や、ポジティブなイメージをすることによって癌を治すという「癌のイメージ療法」などはその代表的な療法といえます。

現在では新しい生体エネルギーの研究から、東洋医学である鍼灸治療と一般的な西洋医学の治療法の間には根本的な共通点がありそうだという考え方が有力になってきています。東洋医学では生体の内外に存在するとされるエネルギーを”気”という概念で意識していることについてはすでに述べましたが、あとでご説明する「生体マトリックス」との関連があると考えられています。

そして、現在では生体のエネルギーを測定できる技術が開発され、「エネルギー医学」として現代科学の分野で注目されはじめているのです。すなわち、サイバネティクスや情報理論を生物に応用して生物学的な統合のシステムという概念が東洋医学にも通じるということです。このようにして、東洋医学と西洋医学の臨床現場で見られる多くの現象は「生体マトリックス」という共通の概念によって説明されつつあります。

生体マトリックスとは細胞と細胞の隙間をつなぐ結合組織のことをいいます。そして最近では生体マトリックスが自己治癒力を呼び起こすのに重要な役割を担っているという事実が明らかとなってきました。生体における細胞間のコミュニケーションともいえる、細胞の成長、修復、治癒などの生命全体を統合しているダイナミックで有機的なネットワーク・システムであると考えられているのが、この生体マトリックスなのです。

また近年の研究により東洋医学の「経絡」が生体のコミュニケーションを統括する有機的なネットワークを形成しているという事実が解明されつつあります。つまり、経絡にはトランジスタや集積回路といったダイナミックで多様な機能を可能にする半導体的な性質があるというのです。

さらに経絡としてのシステムは複雑な情報の伝達と太陽のエネルギーを処理するコンビユーターのような機能を有しているようです。なお、ツボと呼ばれる経穴は半導体ネットワークの端末またはマイクロプロセッサーのような役割として、通信・センサー・エネルギー補給・情報処理などいろいろな機能を合わせ持つものと考えられています。

さて、ちょっと難しいお話になってしまいましたので身近な話題で締めくくりましょう。「病気」は気を病み、「元気」は元の気を意味しています。日常生活の中でも、気分がいいときと落ち込んでいるときでは天と地ほどの差があります。まさに、気を分ける”気分”にほかなりません。このように「病は気から」というのは東洋医学の真骨頂をあらわす言葉といったところでしょうか。つくづく不思議な”気”がします。

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