身体運動と精神活動のつながり

仏教の言葉に「心身一如」というのがありますが、これは心と体の重要な関係性を意味するものです。

洋の東西を問わず精神的な不安は体にとって最大のストレスとされ、このストレスが病気の大きな引き金となっているケースも少なくありません。精神的な不安感が生み出す「心身症」とは心が体に変調をおよぼす病気のことで、うつ、胃•十二指腸潰瘍などはその代表的なストレス性疾患です。

これまで何度もご紹介してきましたが、貝原益軒の『養生訓』には「心を平静にたもち、体をたえず動かすこと」とあります。また、中国の詩人、白楽天は「心安ければ寿し」と詠んでいます。このように心と体にはとても密接なつながりがあるのです。

最近、治療中の患者さんや私の講演会にいらした方から「健康を維持するための運動には何が一番いいのでしょうか?」という相談を受けることが多いのですが、そんなとき私はいつも「散歩」をおすすめしています。歩くことは最高のエアロビクスです。いきなり始めるジョギングでは足腰への負担が大きすぎるだけでなく、正しいフォームで走ることが意外と難しく、スポーツ医学的にも運動障害を起こしかねません。

「足と脳は運命共同体」ともいわれていて、足が弱くなれば脳の働きそのものがダメになるという研究結果も発表されています。「老化は足から始まる」というのがこれです。足腰の衰えは健康を大きく左右するのです。

筋肉には二種類あって、ひとつは速く走ったり高く跳んだりするときに使われる瞬発力のある「相動筋」。もうひとつは体を支え姿勢を安定させる筋肉で、比較的パエアーは弱いけれど持久力ではタフな「姿勢筋(緊張筋とも呼ばれますごです。相動筋は筋肉の色が白いので「白筋」といわれ、魚でたとえるとタイやヒラメなどの白身の筋肉です。一方、姿勢筋は赤いので「赤筋」といわれマグロやカツオと同じように赤身の筋肉です。

そして、このふたつの筋肉を自律神経支配でいうと、相動筋は交感神経系が、姿勢筋は副交感神経系がより強く働いています。したがって、生理学的な観点から姿勢筋には自律神経の機能を調整し内分泌の働きを活発にして健康を増進させる大きな役割があるといえるのです。

このように、体の姿勢を安定させるだけでなく、健康にとっても重要な働きのある姿勢筋をいつまでも若々しく保つためにも足腰の運動は不可欠です。日本の伝統芸能である歌舞伎や能の役者さんの多くが長年現役で舞台生活を続けられるのは、「中腰で停止する」といった動きの基本姿勢(型)で常に姿勢筋を鍛えているからだといわれています。

さらに、中腰の姿勢による足腰の鍛錬は思いがけない効果をもたらします。それは、多くの中高年男性を性的に悩ませているEDの改善に大きな効き目があるのです。

中腰の姿勢のときにおもに使われている筋肉は大腰筋と腸骨筋とを合わせた腸腰筋です(ィンナーマッスルとも呼ばれています)。そして、ペニスに血液を送るには腹部の総腸骨動脈から分かれた骨盤内の臓器に血液を供給する内腸骨動脈の働きが最も重要となります。つまり、腸腰筋を鍛えることはペニスに血液を送っているこの内腸骨動脈を刺激してEDを治療することでもあるのです。

背筋をピンと伸ばすだけでも心肺機能や胃腸の働きが活発になっておのずと体によい循環が生まれるようになるのと同時に、重要な働きをするインナーマッスルの鍛錬にもなります。心気を養うためにもできるだけ日頃から足腰を動かすことを心がけ、意識して実践してみてください。

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