呼吸の重要性

「釈尊の呼吸法」という、おへソの下の「丹田(関元というツボ)」に力を込める腹式呼吸は古くから伝わる健康法のひとつです。不老長寿の秘薬として昔から有名な「仁丹」の「丹」 は、この「丹田」からきています。

ヨガをはじめ太極拳や真向法などの健康法はどれも呼吸を大変重視しています。生理学的に呼吸と自律神経の関係を見てみると呼気時には副交感神経が働き、一方吸気時には交感神経が働いています。たとえば、睡眠中における内臓などの機能は副交感神経が、また自然界で動物が敵に襲われたときの逃避行動などでは交感神経が強力に作用して身の安全を守ってくれています。

すなわち、持久力のある副交感神経に対して交感神経は瞬発力はあるものの持久力には乏しいといえます。そのため、呼吸法では吐く息はゆっくり長く、逆に吸う息はそれより早くするのが原則とされています。

そもそも呼吸には体にある不要な緊張感を和らげる効果があります。精神的にとても緊張しているときに、深呼吸をすると体全体がリラックスするあの感覚です。

ところで、息を繰り返すことを”呼吸”といいますが、なぜそれを”吸呼”とはいわないのかその理由をご存じでしょうか。文字のごとく、”呼”は息を吐くこと、”吸”は息を吸うことです。たとえば朝夕の通勤・通学ラッシュ時に、満員の電車やバスに乗客が乗るにはまず降りる人が先です。呼吸もこれと同じで、息を十分に吐ききると無理に息を吸い込まなくても自然に空気は肺の中に入ってくるのです。これが呼吸の自然な仕組みというものです。ですからラジオ体操の深呼吸での「吸って、吐いて」は本当は逆だったのですね。

昔からの言葉に「阿吽の呼吸」というのがあって、これは両者の息がピッタリ合っていることを意味します。”阿”は吐く息、”吽”は吸う息のことであり日本語の五十音の最初と最後の音でもあって、あらゆる現象の始めと終わりをあらわします。

私たちは無意識に”吸呼”ではない”呼吸”をしています。神社の狛犬や寺の仁王像の口の開きと結びの形も「阿吽の呼吸」をあらわしていて、これも先ほどの陰陽思想のあらわれなのです。

人間の生死についても同じことがいえます。赤ちゃんはオギャーと言って”呼気”で息を強く吐いて生まれてきます。人が亡くなるときは「息を引き取る」と表現されるように、”吸気”で大きく息を吸い込んであの世へと旅立ちます。

息をゆっくり整えるだけで体全体をリラックスさせる”呼吸”には、その姿や形こそ目には見えませんがすごいパワーが秘められているのです。

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