食べ物は薬だ!

食事による養生すなわち「食養」は「医食同源」ともいわれ、人と土地のバランスのとれた結びつきを原則としながら食べ物で体の健康改善を図ります。いわゆる「心土不二」というものです。人間は誰でも自分が生まれ育った郷土性を身につけていて、人と土地は切っても切り離せないものとなっています。これを東洋医学の陰陽思想に当てはめると「陰は陽を生じ、陽は陰を生ずる」となります。

どういうことかというと、たとえば熱带地域のような極陽性の土地では水気たっぷりの甘くて体を冷やす果物やサトウキビといった極陰性のものが多く収穫されます。それに対して極北の寒帯地方の極陰性の地では、たとえばエスキモーの人たちにとって重要なオットセイやアザラシなど、脂肪分の多い動物性のタンパク源となり冷えた体を温める働きをする極陽性のものが多く収獲されます。このように暑い土地では体を冷やす効果のある食物が、そして逆に寒い地方では体を温める効果のある食物が私たちに与えられているのです。

ここで、陰陽の関係を料理で考えてみましょう。ちなみに料理とは「理を料る」という意味あいの、純粋に科学的な手法ともいえる、まさに理に適った技術なのです。

前にも紹介しましたが明治時代に”食聖”といわれ、陸軍薬剤監であった石塚左玄は『化学的食養長寿論』を著しています。この中で石塚は正食医学の原理という「ナトリウムとカリウムの二大ミネラル拮抗性原理」なるものを展開しました。どういう内容か簡単に説明しますと、肉や魚などのナトリウム(N3)と野菜のカリウム(K)の摂取バランスが健康にとって大変重要であるというものです。

つまり、動物性タンパク質に含まれるナトリウムが多すぎるときには塩分(Nacl)を控えめにする必要があります。そして野菜のカリウムは塩のナトリウムとはとても相性がいいといえます。ですから、肉類中心の食生活では極力塩分を控えるように注意しなければいけないのです。

塩のお話をしたところで、次は砂糖との関係についても考えてみましょう。塩は陽性であるのに対して砂糖は強い陰性です。東北などの寒冷地方では冬の保存食として塩蔵食品の漬物を作りますが、これには野菜のカリウムと塩のナトリウムを上手に組みあわせる食生活の知恵が生かされています。一方、沖縄や奄美地方の郷土料理には砂糖が多く使われているのも自然の摂理といえるでしょう。

つまり、塩には体の細胞を引き締める作用が、逆に砂糖には細胞組織を緩める働きがあるのです。このことからも一般的に甘いものを食べすぎると蔽血や水毒という、本来の働きを失った血液や余分な水分が体内に停滞して健康を害する危険性があります。さらに、糖分の取りすぎは「脱灰現象」といって、カルシウムの過剰な排泄をうながしてしまい、そのために中高年の多くの女性にみられる骨粗鬆症の発症原因にもなってしまうことがあります。最近では有名パティシエによるスイーツが若い女性を中心にブームとなっています。くれぐれもご用心ください。

最後に、野菜の成分が持つ重要な働きである血液の流れをよくする効果と、体の機能を丈夫にする免疫抵抗力(解毒作用)についてお話しましょう。

多くの野菜には血液をサラサラにして動脈硬化を予防する効果が認められています。そこで、どちらかというと肉や魚などの動物タンパクが多い食生活をしている方でしたら、なるべく野菜もたくさん食べたほうが健康にいいというわけです(このことについては先ほどナトリウムとカリウムの関係についてお話したとおりです)。

また、刺身にツマとして添えられている大根の極細切りやパセリ、シソ、ミョウガ、カイワレ大根、ネギ、ショウガ、ニンニクなどの香味野菜には解毒作用以外にも免疫抵抗力を高める成分が含まれていて、刺身の栄養素を分解し効率よく体内に取り入れる働きがあります。

さらに、野菜や海草の中でもヌルヌル・ネバネバの代表選手である山芋、オクラ、ジユンサイ、ワカメ、芽カブなどにはムコ多糖類という成分が含まれており、これは保湿性にすぐれ細胞に水分と栄養を運ぶ働きがあります。ネバネバ系は比較的好き嫌いのある食べものですが、なるべく食べるように心がけていただきたいと思います。

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